これは輸送科バッジであって、運転者技能章ではない!

  
 Автомобильные части(アウトモビーリニィエ チャースチ)といいます。
 GOOGLEの機械翻訳では自動車部隊としか出てきません。直訳はそうなんですが、正しい日本語に訳せば輸送科のことです。自動車が導入された帝政ロシアの時代、広大な国土で兵や物資を迅速に輸送する重要性を認識した軍は、自動車は当然に輸送科が最優先で使うものと位置づけしました。そのため、ロシア・ソビエトでは、大砲が砲兵の象徴であるように、自動車は輸送科の象徴です。
 なお、輸送科の制服は戦車・装甲車科と同じグレーです。資料が少なくカーキグリーンかもしれないと思っていましたが、Приказ НКО СССР № 229 от 17.12.36 г.(1936年12月17日付け軍令229号)によると、「輸送科は戦車・装甲車科と同じ制服とする。」と規定されています。やはり、マシーンを扱うエリート部隊という位置づけなのでしょう。(どこかの国の輜重科とはえらい違いだ。)
 輸送部隊は中隊・小隊などの小さな単位でバラバラに各部隊に配属され、武器弾薬食料の輸送はもちろん、歩兵部隊の一団を駅から前線へ、町から町へ運ぶのも、車で運ぶなら輸送部隊の任務です。
 トラックを歩兵部隊などで所有する国もありますが、一長一短です。歩兵部隊でトラックを持っている場合、部隊がある町に1か月駐屯した場合、そのトラックは放置状態となります。輸送科が所有していれば、必要な部隊のために走り回ってフル活用できます。ただ、歩兵部隊としては、使いたいときに使えない場合も出てきます。現代の企業でも同じことですけど。総務課で一元管理するのか、各課で持つのか、ね。
 それにしても、このバッジ、タミヤの「ロシア歩兵セット」はじめ多くの書物で「操縦者バッジ」みたいな解説がしてあったため、30年ほどだまされ続けてきました。まるで運転ができる兵であることを示す技能バッジみたいな説明が多いですが、違います、輸送科の兵科バッジ及び各科所属ながら自動車輸送を専門にする兵隊が付ける兵科バッジです。日本人は軍隊について語るとき、輜重を軽視しすぎです、今でも。ソ連の砲工歩騎などの兵科バッジを説明する際に、輜重兵がないことに気がつかない、おかしいな、と思わないんですね。「操縦者」じゃねいぞ、これが「輜重(輸送)兵」だ、ゴルァ、ってな感じです。(ところでタミヤの「ロシア歩兵セット」、今思えばすごいネーミングですね。ウクライナ人やベラルーシ人の兵隊は無視ですか。。。)


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