歩兵連隊。別名小銃連隊。狙撃兵連隊?なんだそりゃ。

 Стрелковые войска(小銃兵科)
 Стрелковый полк(小銃兵連隊)
 стрелковыйは「射撃の」とか「小銃の(ライフルの)」という意味の形容詞です。語源のстрелкаという名詞は「矢」のことです。
 構成する兵は、正式にはпехотаと呼ばれます。ズバリ「歩兵」です。(語源はラテン系の言語で、「徒歩の連中」程度の意味。「騎乗」の対義語です。昔は歩く兵隊と騎乗の兵隊の2種に大別されていたことによります。)
 1918年、пехота(歩兵科、歩兵、両方の意味があるがここでは歩兵科。)はСтрелковые войскаに名称変更されました。これをもって当時の日本語で「狙撃兵連隊」と訳されました。
 「当時の日本語」というところがミソです。当時、狙撃兵というのは猟兵、散兵の別語であり、戦列歩兵の対義語でした。つまり、物陰に隠れてスコープで相手を狙って撃つという、現代的な狙撃兵(スナイパー)の意味ではありません。

<19世紀的な言葉>
◯戦列歩兵
 ナポレオン戦争などでよく見られるように、ズラーッと横一列に並んで(「戦列」を組んで)敵陣へ突進する兵のことです。基本的に、火縄銃時代と同様、敵を狙い撃ちするものではありません。そのため銃は旋条が切ってありません。

◯猟兵(狙撃兵、ライフル兵)
 戦列を組まずに散開して伏せたり隠れたりしながら敵を討つ兵です。敵を狙って撃つため、銃は当然旋条が切ってあります。現代の各国歩兵は、すべて歩兵でなく猟兵ですね。
 イギリスではライフル連隊と呼称します。今でも、たとえばKing's Royal Rifle Corpsなど、ライフルと名称のつく部隊がいくつかあります。
 ドイツでは猟兵(Jägerイェーガー)と呼称していました。
 ロシアでは帝政時代はЕгерь(イェーゲリ)と呼称していました。

 そんなわけで、ソ連のСтрелковый полкはイギリスのRifle Regimentと全く同義です。現代では「狙撃兵」と言えばスナイパーを指すように言葉が変わってしまったため、普通に歩兵と訳したほうが良いかと思います。

 というわけで、私が小さい頃読んだ本に「ソ連には歩兵部隊はないのだ、みんな狙撃兵部隊なのだ。みんなが狙撃兵なのだ。」とありましたが、それはウソです。アホな話です。全くの都市伝説です。みんなフツーの歩兵です。PPSh41で狙撃できるはずがありません。(笑)

 Стрелковые войскаは英語では普通「Rifle troops」と訳されます。たまに「Shooting troops」と訳したものがありますが、「Sniper troops」と訳したものはただの一つも見たことありません。Shootingを辞書で見ると、射撃、狙撃、とあります。
 英米人が「Rifle troops」と訳した意も汲んで、Стрелковые войскаは日本語では小銃兵科と訳すべきですが、ことさら小銃兵科などと難しく訳すことに日本語的には何の価値も見出せない(常用的な単語でない)ので、このサイトでは普通に歩兵と呼んでいます。


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