内務人民委員部(NKVD、НКВД)とは

 まず、NKVDというと当時の秘密警察組織のことだと思う方が多いようですが違います。秘密警察は確かにNKVDの所属ですが、NKVDは秘密警察のことではありません。  NKVDとは共産党の内務人民委員部、普通の国の組織でいえば内務省です。国家組織がソ連を運営していたのでなく、共産党の各部門がソ連を運営していた時代なので、内務「人民委員部」などという難しい呼び名なのです。
 そもそも内務省というのは国内警察の管轄省庁です。日本でも戦前は内務省というのがあり警察を管轄し、今と違い警察組織は国内に一つであり、都道府県に支部がある状況でした。戦後日本ではGHQの指令で、47個の警察組織が分立しています。
 話がそれましたが、内務人民委員部(NKVD)は「専門の」スパイ組織でも粛清組織でも何でもなく、国内治安組織、つまり警察です。
 実際のNKVD人員の大多数は警官と、国内軍と国境警備隊の任務者です。国内軍と国境警備隊は数十個師団を構成し最前線に従軍しており(終戦時は50個師団もあったそうです。)、他に少数の秘密警察任務者がいたといったところです。ウィキペディアのNKVDの解説は、まるでNKVD=秘密警察=督戦隊と受け取れるようなひどく偏った記事になっていますので、注意が必要です。
 NKVD隷下の実力組織としては、国内軍、国境警備隊、秘密警察(GUGB、オルガン)、RKM(労農警察、民警(ミリツィヤ)、おまわりさんともいう。)などがありました。
 国内軍とは武装警察のことです。ただし、戦車などの重装備も持っています。ロシア語でВВと略されます。今でも存在します。ロシアやソ連の国内で暴動があったときに出動するのがこれです。赤軍(РККА)や、それの後継組織であるソ連邦軍(СА)は、外敵と戦うのが専門なので、国内鎮圧任務には通常つきません。なお、国内軍には海上部隊も存在します。
 国境警備隊は国境を警備している兵団です。ロシア語でПВと略されます。陸の国境のない日本人には分かりにくい概念ですが、国境を警備するのは軍隊の仕事ではありません。内務省(警察)の仕事です。(ただし、革命直後の不安定な時期は国境警備隊は赤軍の管轄でした。)赤軍(РККА)や、それの後継組織であるソ連邦軍(СА)は、外敵と戦うのが専門であり、平時は編成地に常駐しているため、国境にはいません。なお、国境警備隊にも海上部隊が存在します。これはちょうど、現代日本の海上保安庁と同じです。
 秘密警察は防諜と、粛清任務の専門組織です。多くのNKVDファンが喜んで想像するとおりの仕事をしていました。(笑)
 日本で言う普通のおまわりさんは、日本語では民警と呼ばれます。


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