全般を通して、注意すべきは、歩兵の兵科バッジがないことです。
なぜ歩兵のバッジが制定されなかったかについては、現代の旧ソ連諸国の間でも大いに議論となっていて、結論が出ていないようです。事実としては、一度も制定された痕跡がないが、現実に存在し、1943年以前の歩兵の階級章には必ずついていた、ということです。1943年以降は、軍令どおり、一切つけなくなった、ということです。
もう少し詳しく説明すると、1922年の軍令では違ったデザインのものが制定されたんですが、1924年に早々と廃止されました。その後は歩兵のバッジは一切制定されませんでした。しかし1940年の階級の改定時に出された、階級章を図示した参考図書には、少尉や中尉の階級章の星の数を説明した図に、さりげなく歩兵のバッジがついているので、軍当局自身も歩兵バッジを認めていることが分かります。しかし、他の兵種と大幅に違う、白と赤のエナメルまで使用するようなデザインを、いつ誰が生み出したのかは、現在の旧ソ連諸国のネット上でもいまだにナゾとされています。(1922年のバッジはデザインも全然違うし、もちろん他と同じでエナメルなんぞ使用していない。)
また、騎兵についても、歩兵と同様に2年で消滅しましたが、1943年の改定で復活しています。けれども事実としては、騎兵も戦後に至るまで一貫して騎兵バッジをつけていました。
なぜなんでしょうか?他の兵種のようになんらかの専門知識があるのではなく、歩兵と騎兵は銃で戦うしか脳のない兵隊だからバッジは不要と判断されたのでしょうかねえ。(銃を扱えるのは兵隊一般としてあたりまえ、馬に乗れるのも当時としては男としてあたりまえ、つまり特殊技能なし、ということでしょうか。)もしくは、砲兵と戦車、各種工兵などは、襟章の色だけでは兵科が分からないから、兵科バッジを制定したのでしょうか。でもそうすると、歩兵、騎兵はいいとして、航空もバッジの必要がない気がしますけど。
まあそもそも、ソビエト人のすることは、ドイツ人ほど合理的ではないですけどね。